1.会社法の制定
2005年6月29日、国会で新しい「会社法」が成立し、7月26日公布された。施行期日はまだ決定していないが、来年6月の株主総会開催に間に合うように2006年5月頃施行を目指すとされている。
2.有限会社の廃止
会社法の大きな変更点として、有限会社制度の廃止を挙げることができる。会社法において有限会社は廃止されたが、既存の有限会社については「特例有限会社」として現行有限会社のメリットを享受できる形で存続するか、株式会社に組織変更することになる。
特例有限会社については、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律により以下のような会社法の特則が設けられた。特例有限会社は、形の上では株式会社となるので、会社法施行後はその定款は株式会社の定款とみなされ、社員は株主・持分は株式・出資1口は1株とみなされる。
特例有限会社の定款には、
(1) その発行する株式全部について株式譲渡制限をする旨
(2) 特例有限会社の株主が株式を譲渡により取得する場合には当該特例有限会社が承認したとみなす旨
の定めがあるものとみなされる。また、特例有限会社は、これと異なる定款の定めを設ける定款変更はできない。特例有限会社の株主総会の決議要件は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3以上の多数による賛成となる。
監査役設置の定款規定がある特例有限会社の定款には、監査役の監査を会計に関するものに限る旨の定めがあるものとみなされる。
3.有限会社の組織変更
上述のように現行の有限会社については会社法施行後は特例有限会社となるか、株式会社へ組織変更しなければならない。特例有限会社となるためにはみなし規定があるので原則として特に登記の変更などはしなくて良い(ただし、登記が必要な事項もあるので注意を要する)。
株式会社へ組織変更をするためには、会社法施行後、株主総会で商号変更に関する定款変更決議を行い、株式会社の設立登記と有限会社の解散の登記を行う必要がある。
特例有限会社とするか、株式会社へ組織変更するかは判断が難しい。以下のようなメリット・デメリットを考慮して判断する必要がある。
■有限会社を株式会社とすることのメリットとして
1. 有限会社よりも株式会社のほうが取引相手に対して信用力やイメージの良さをアピールできる。
2. 会社の登記が簡単となる。会社法では、住所の登記は会社を代表する取締役、清算人のみで、他の取締役、清算人は氏名のみの登記でよい。現行有限会社法では、取締役および清算人に関する登記事項は、氏名、住所、会社を代表する取締役、清算人の氏名であるが、特例有限会社では、旧有限会社の登記簿をそのまま利用するので、現行有限会社法の規定に合わせた登記が必要である。また、監査役を設置する場合も住所、氏名を登記する必要がある。
3. 有限会社から株式会社へ組織変更する場合、株式譲渡制限とすることが多いと思われるが、譲渡制限をはずせば証券取引所へ上場することも可能となる。
4. 経営者は自分の望む機関設計を選択することができる。
5. 会社法で新設される会計参与を任意に設置できる。会計参与は取締役と共同して計算書類を作成するのが職務であり、中小会社の計算書類の信用度が高まると同時に金融機関が会計参与設置会社に対しては融資等について優遇措置をとる可能性も指摘されている等が挙げられる。
■反対にデメリットとしては
1. 会社法の規定に問題があった場合に、トラブルの処理のために時間、労力、費用がかかってしまう可能性がある。
2. 有限会社から株式会社へ移行する手続自体は上述のように簡単であるが、商号変更に伴う社印や印刷物、看板などの新規作成や印刷などに時間や費用がかかる。
3. 証券取引法上の有価証券報告書提出会社を除き、全株式会社に決算公告義務が生じる。有限会社では決算公告義務が課されていないため、特例有限会社についても義務を課さないことになっている。
4. 会社法では、株式譲渡制限会社については、取締役の任期は原則2年、監査役は4年としつつ各会社が定款で定めることにより最長10年まで延ばすことができる。有限会社では、経営の安定のために取締役および監査役の任期は制限していないことから、特例有限会社でも同様としている。
4.会社法施行までの起業について
上述のように会社法は2006年5月を目処に施行されることが予定されている。それまでに会社設立や現在経営している会社の組織変更については,どのように考えればよいか。
1. 株式会社の設立…会社法施行前に株式会社の設立を考える場合、資本金を最低1,000万円集めなければならない。これが一番大きな問題といえる。会社法施行後は最低資本金規制が撤廃されるため、資本金1円の株式会社も許容される。その他の設立手続についても発起人や設立時の取締役の責任が会社法では軽減されている。現在有限会社を経営している場合に、株式会社へ組織変更するためにも1,000万円以上に増資する必要がある。
2. 有限会社の設立…現行の有限会社は既に述べたように会社法施行により廃止され特例有限会社か株式会社への組織変更となる。会社法施行前に有限会社を設立すると300万円の最低資本金が必要である。 ただし、現行有限会社のメリットを確認有限現会社へ引き継げるので、とくに決算公告義務を免れたり、取締役の任期の制限を受けたくない場合には、駆け込みで有限会社を設立する利点はあると思われる。
3. 確認会社の設立…確認会社は、創業者が中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に基づいて設立することができる会社で、現行商法および有限会社の例外として最低資本金規制が排除されている。 ただし、設立後5年以内に株式会社では1,000万円以上、有限会社では300万円以上に増資してその登記がされなければ解散することを定款に規定しその旨を解散事由として登記簿に記載する。
会社法施行後は最低資本金規制が撤廃されることから、確認会社についても増資の必要はなく、前述の定款を変更し解散事由の登記を抹消する登記申請をすることで、会社を存続することができる。したがって、会社法施行前でも確認会社制度を利用すれば最低資本金規制を受けないで会社を設立することが可能である。
4. 会社法では、株式譲渡制限会社については、取締役の任期は原則2年、監査役は4年としつつ各会社が定款で定めることにより最長10年まで延ばすことができる。有限会社では、経営の安定のために取締役および監査役の任期は制限していないことから、特例有限会社でも同様としている。
◆まとめ
現行の商法規定は大規模会社を前提とした規定でその内容は厳格であり、中小会社が守らない(守れない)ことも多く、たとえば決算公告の不実施、株主総会の不開催、取締役会議事録の未整備などの問題点が指摘されていた。
しかし、新しい会社法は従来の中小会社に合わせた規定を原則としており、当然遵守すべきものということで厳格な適用がなされるようになるかもしれない。そうなると、会社法に規定される罰則が科せられる事例の増加も見られるかも知れない。
また、これから起業を考える場合も、法律上多くの選択肢が存在することから、経営者を目指す者はこれまで以上に会社法の内容を研究して自分の求める会社を作り上げていく必要がある。
参考文献
相沢 哲 編著 『一問一答 新・会社法』 商事法務、 2005年
相沢 哲・郡谷 大輔 著 『会社法制の現代化に伴う実質改正の概要と基本的な考え方』 商事法務1,737号11頁、2005年
相沢 哲 著 『新会社法の概要』 金融法務事情1,746号81頁、2005年
山本 憲光 著 『有限会社法の撤廃に伴う経過措置』 商事法務1,738号14頁、2005年