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経営リスク回避のために〜中小企業の取締役機能を考える
【第17回】会社法施行による監査役の問題 (H18.5月)

 2006年5月1日(月)、ついに「会社法」が施行された。従来のいわゆる会社法制と比べると、有限会社の廃止、中小規模の会社に関する規制をメインとする、定款自治の範囲の拡大、その他多くの変更点があることから、会社の役員や法務担当者などは5月1日に向けて膨大な作業を行ってきたことと思われるし、また、これから株主総会へ向けての作業も残っていることであろう。

 さて、2006年4月29日(土)の日本経済新聞の投資・財務欄1に、ゲームソフト受託開発のエイディングという会社が、4月28日に会社法施行に伴って3人の監査役全員の任期が終了し法定員数を欠くことになると発表したという記事が出ている。
 監査役の権限は、業務監査権と会計監査権の2種類がある。従来の会社法制(商法特例法)では資本金1億円以下の会社(小会社と呼ばれた)については、監査役の権限は会計監査に限定されていた。理由は、そのような規模の会社においては取締役の業務を監査し違法な業務を行っていた場合にはそれを正すことができる人材を確保することが困難であるからといわれていた。エイディングの監査役はすべて業務監査権限がなかった。

 新しい会社法では、会社の区分が次のように改められた。

1. 公開会社(発行している株式の一部でも譲渡制限がない会社)
2. 公開会社でない会社(発行している株式全てに譲渡制限が定められている会社)
3. 大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)
4. 大会社でない会社(資本金5億円未満かつ負債総額200億円未満の会社)

である。そして、以上の4つの分類を組み合わせて、公開会社で大会社、公開会社で大会社でない会社、公開会社でない会社で大会社、公開会社でない会社で大会社でない会社とに分けて、会社法上のさまざま規制が適用されることになっている。

 会社法では、実務の混乱を回避するために整備法により原則として定款や登記の変更を行わなくて済む措置を講じている。従来の小会社の監査役の権限についても整備法53条でみなし規定を置いている。しかし、会社法389条1項では公開会社において、監査役の業務権限を会計監査権限に限定する旨の定款の定めをおくことが認められないと規定しているので、整備法53条は適用されず公開会社では業務監査権限のない監査役を設置することができないことになった。上述のエイディングはマザーズへ上場していることから新しい会社法では公開会社の範疇に入るため、5月1日からは監査役は業務権限を有する必要が出てきたため、今回の報道のようになったものである。
 エイディングは新しく業務監査ができる仮監査役の選任を東京地裁に申し立てた。

 従来の小会社に該当する株式会社は、日本の株式会社の大多数を占めるものである。
ただし、その多くが定款で株式譲渡制限を定めているものと思われるので、このような問題は、上場しているベンチャー企業などに限定されると考えてよいかもしれない。けれども、繰り返すが会社法で公開会社とは発行する株式の一部でも譲渡制限がなされていない会社のことをいう。これまで公開会社とは証券取引所や店頭取引市場に上場している会社という認識だったので、経営者も誤解している場合も考えられる。

 話を整理すると、まず会社法施行により公開会社の監査役は業務監査権限を有しないといけない。しかし、従来の小会社に該当する会社では監査役は会計監査権限のみを有していた。小会社の多くは定款で株式譲渡制限を規定しており、これは会社法施行後も引き継がれる。しかし、小会社の中でうっかり株式譲渡制限を定款に規定していない場合には、会社法上公開会社ということになり、会計監査権限のみの監査役の任期は会社法施行と同時に終了することになり監査役がいないことになってしまう。公開会社では委員会設置会社を除いて監査役は必ず設置しなければならないので、放っておくと会社法違反となる。
 少し複雑な内容であるが、多くの会社において該当する問題かも知れないので、会社法施行を迎えたことにより、もう一度自社の監査役の状況を確認しておく必要がある。

 
 
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